東北コットンプロジェクトについて
 最近、天衣無縫のオーガニック製品をご愛用いただいていた大切なお客様から、続けざまに天衣無縫が「東北コットンプロジェクト」に参加していること対する「反対」「再考」を求めるメールをいただきました。

 「東北コットンプロジェクト」の事務局に問い合わせたところ、他の参加企業にも同様のメールが送られているということでしたので、実際のお問い合わせのない天衣無縫のお客様も、いろいろご心配されているのではないかと考え、この問題に対する私たち天衣無縫の立場を明確にするために、昨日、天衣無縫のお客様にお送りしたメールの一部を公開することにいたしました。

○○○○ 様

 天衣無縫ウェブショップへのメールをありがとうございました。
また、いつも弊社のタオルをご愛顧いただきありがとうございます。
私は天衣無縫の東北コットンプロジェクト担当の藤澤です。
私たちの「東北コットン」についての情報伝達の不備で、ご心配をおかけし、
また失望をもたれてしまったこと、大変申し訳なく思っております。

 お問い合わせの件についてお答えさせていただきます。

1、「東北コットンプロジェクトの原料を使うことは決定なのでしょうか?」

→東北コットンプロジェクトの原料を製品に使うことはまだ最終的に決定して
おりません。と申しますのは、「東北コットン」は東北大学理学部物理学科
原子核物理研究室で、採取した綿花、綿の茎、土壌、空間に対する放射線測定を
行うことにしておりますが、現在名取市圃場で採取した綿花の測定が終わった
ばかりで、9月の台風の水害で収穫ができなかった荒浜圃場の綿花の測定が
終了していないからです。

 ご参考までに11月に行った名取圃場の検査結果を「事務局の公式見解」として以下に転記させていただきます。


 名取圃場の放射能測定結果と出荷判断について

 名取圃場に置ける綿、綿の茎、土壌、空間に対する放射線測定結果をご報告します。

検査機関;東北大学 理学部 物理学科 原子核物理研究室
試料採取日:平成 23 年 11 月 25 日
採取場所 :宮城県名取市下増田耕谷後 40aのうち2カ所

試料測定機器:ゲルマニウム半導体検出器


試料 1:地表面を 5cm 削ったうえで、20~30cm うねって作付けした地点で採取した試料
試料 2:地表面は削らずに 20~30cm うねって作付けした地点で採取した試料

空間線量測定機器:NaI シンチレーションサーベイメータ

<スクリーンショット(2011-12-27 12.23.26).png><スクリーンショット
(2011-12-27 12.24.01).png>
-
綿に関して、いずれもセシウム134/137は検出限界値を下回り、検出できませんでした。
従って、収穫された綿の移動について問題ないと判断します。
綿は、紡績(糸に紡ぐ行程)工場へ移動します。
糸の出荷段階で、改めて、放射線検査を行い、またご報告いたします。
ー(ページ2)ーーーーーーーーーーーーーーー

(タイトル)
出荷判断に至る過程について

(本文)

2011年に名取で収穫された綿の出荷は問題ないと判断しました。
その根拠については、別ページの測定結果によりますが、
当方が検討した過程についてもご説明いたします。

1、原則
出荷判断について、本プロジェクト原則をご説明します。
1、公共の利益
  復興を目的とする本プロジェクトの精神に則り、公共の利益を一番に考えて行います。
2、第三者機関
  第三者機関である東北大学理学部 物理学科 原子核物理研究室に検査を依頼し、
   客観的、科学的事実を元に判断を行います。

2、外部被ばく

仮に検出限界ぎりぎりの放射線量が含まれていた場合のシュミレーションを行いました。

試料 1 の検出限界と同じ 134Cs が 21[Bq/kg]、137Cs が 47[Bq/kg]含まれる
綿 1[kg](Tシャツの場合200g程度)を 全身にまとうと考え、
この綿による一時間あたりの外部被ばく線量を概算しました。

放射線は全ての方向に等しく放出されると考えて良いので、
セシウムから出てくるγ線 の半分が体に当たると仮定します。
(下図のようなイメージ⇒12 個のうち 6 個の放射線が体に当たる)
<スクリーンショット(2011-12-27 12.38.41).png>
134Cs は 1[Bq]あたり主に 2 個のγ線(エネルギーは 605[keV]と 795[keV])を出し、
137Cs は 1 個のγ線(エネルギーは 662[keV])を出します。
体に当たったγ線は体内で全てのエネルギーを失い、体を突き抜けて
再び外に出てくる ものはないとし、 セシウムの量も時間と共に減少しないものとします。
γ線が全身に均一に 当たるとすれば、体重 60[kg]の人が受ける一時間当たりの線量[Sv/h]
(ここでは[J/(kg h)] と同じ意味で一時間当たりの実効線量(次頁注釈参照)を表す)は
線量[Sv/h] ={21[Bq/kg]×1[kg]×(605[keV]+795[keV])+47[Bq/kg]×1[kg]×662[keV]} ×1.6×10-16
[J/keV] ×3600[s] /60[kg] /2(放射線の半分が当たる) =2.9×10-10[Sv/h] となります。
(*1.6×10-16[J/keV]はエネルギーの単位を換算する係数である。)

以上より 綿 1[kg]を 全身にまとう際の外部被ばく線量は2.9×10-7[μSv/h] (0.00000029[μSv/h])と
見積もることができます。
例えば東京における平均的な空間線量は 0.06[μSv/h]ですからその 20 万分の 1 程度の線量です。

3、内部被ばく

仮に今回検査した名取 試料 1 の検出限界と同じ 134Cs が 21[Bq/kg]、137Cs が
47[Bq/kg]含まれる綿を誤って 1g 吸引した場合のシュミレーションを行いました。

(これだけの量を通常の環境で吸引することはまずありえませんが、
ここでは被ばく線量を計算するために 1g 吸引したと仮定します)
<スクリーンショット(2011-12-27 12.59.22).png>
- 元のメッセージを隠す -

国際放射線防護委員会(ICRP)によって定められている実効線量換算係数を用いて
体内 に取り込まれた放射性物質の量[Bq]から実効線量[Sv]3を算定します。

大人における 134Cs と 137Cs の実効線量換算係数はそれぞれ
134Cs 1.3×10-8[Sv/Bq]
137Cs 2.4×10-8[Sv/Bq]

ですから、

計算式(実効線量[Sv]=経口摂取量[kg]×放射能濃度[Bq/kg]×実効線量換算係数[Sv/Bq])
にあてはめて
実効線量[Sv]=0.001[kg]×21[Bq/kg]×1.3×10-8[Sv/Bq] +0.001[kg]×47[Bq/kg]×2.4×10-8[Sv/Bq]
=1.4×10-9[Sv]
となり、これより試料 1 の検出限界相当の綿を 1[g]吸い込んだときの
実効線量は 0.0014[μSv]と見積もることができます。

また、セシウムと化学的性質が似た元素にカリウムがありますが
カリウムは身の回りに多量に存在 する元素のひとつであり、
地球上のどこにいても 40K(半減期 12.8 億年)の放射線による被ばくは免れません。
人体内のカリウムの量は体重の 0.2%であり、
自然界に存在するカリウムの 0.0117%が放射性の 40K なので、
60[kg]の人の 40K の放射能は約 4000[Bq]と見積もる ことができま
綿1kgに134C と 137Csの検出限界の合計が68[Bq/kg]含まれていたとしても、
体重が1[kg]増えたときの40Kの放射線増加量(約4000[Bq]/60[kg]=約67[Bq/kg])
にほぼ相当する程度です。

またこの40Kは多くの食品に含まれており、例えばバナナ1本約100g
を食べることによる被ばく線量はバナナ1[kg]には約 150[Bq/kg]の 40K が
含まれており、40K の実効線量換算係数は 6.2×10-9[Sv/Bq]であることから;
実効線量[Sv]=0.1[kg]×150[Bq/kg]×6.2×10-9[Sv/Bq] =0.09[μSv]
であり、上述の綿はこの64分の1です。

 以上は名取圃場で採取した綿に対する検査結果ですが、荒浜圃場については台風による水害のため、綿の実が開かなかったため、検査が1月になる予定です。
その結果については改めてお知らせしたいと思います。

 東北コットンプロジェクトではこのように、綿、綿の茎、土壌、空間について、逐次検査し、次の段階である紡績工程においても糸の検査を行い、生地から製品への各工程で検査を行う予定であり、天衣無縫では専門的な第三者機関よりその安全性が証明されない原料は一切製品に使用する決定はいたしません。

 2、次に東北コットンプロジェクトに私たち天衣無縫が参加した理由ですが、それは東日本大震災の津波で仕事と生活を奪われ、悲惨な状況におかれた宮城県の被災農家の皆さんに、私たちが自分の仕事(本業)を通して少しでもお役に立ちたいという素朴な気持ちが生じたからということにつきます。

 私たちは、20年近く進めてきたオーガニックコットンの仕事の中で、人は自分一人でこの世に存在しているのではないこと、綿花を生産する農業者の皆さん、工場でタオルを製造する製造業の皆さん、そしてお店で製品を販売する販売員のみなさん、それを支えてくださるお客様、そのような多くの人々の支えによって私たちが存在できていることを学んできました。

 私たちのような小さな会社では取得するのが困難なオーガニックの国際認証に挑戦して、取得してきたのも、人と人のつながりや、人と自然環境のつながりを大切に思う気持ちからでした。

 私は「オーガニック」という言葉の意味を単に有機栽培でできた生産物という「物」の世界にとどめることなく、その背景にある人と人の関係や、多様な生物が共存している地球の自然環境との関係のありかたにまで広げて考えるようになりました。その意味で私たちにとっては、今年の3月11日に突然東北地方を襲い、多くの人々がかけがえのない命とふるさとを奪われた大震災は終わっていないのです。

 私は「東北コットンプロジェクト」の意味を、義援金や物資を送る一方通行の被災地支援のあり方(それは私たちもおこなってきましたし、それ自体は必要で大事なことですが)をこえて、双方向のパートナーシップに基づく支援者ー被支援者の新しい関係のあり方を模索するものではないかと考えています。私は「オーガニック」の目的を持続可能な地球の自然環境や社会を作り出すことができるように自分の暮らしや仕事や考え方を見直すことではないかと考えていますが、そのような私たちにとって、この「プロジェクト」は避けては通れないものであったのです。

 長いメールになってしまいました。まだまだお話ししなければならないことがたくさんあると思いますが、とりあえず以上をもちまして、頂いたメールに対する回答とさせていただきます。

お返事が遅れたことをお詫びいたします。


2011年12月29日 

株式会社 新藤  藤澤 徹

 
(written by わたのはな)

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by ten_i_muhou | 2011-12-30 22:15 | わたのはな
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